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地物の情報は不要か?


現状

 ECDIS と共に使用される航海用電子海図は紙海図と同等である事から、航海用電子海図に含まれる情報は、紙海図と同等であるべきなのですが、日本の航海用電子海図には、地物のうち、道路、鉄道、街区、建物、等高線、など、の情報が含まれていません。日本での航海用電子海図開発は、1990年代前半から始まっていて、当時は計算機の処理能力が低いため、これらの陸上の情報を電子化して、航海用電子海図を作る事は技術的に困難でした。その後、航海目的として ECDIS と共に使用される様になっても、紙海図に含まれる陸上の様々な情報は、未だに航海用電子海図には含まれていません。


S-57 では?

 S-57 は、全世界の海図が電子化できる様に、数多くのオブジェクトと属性が定義されています。無論、この中には、道路、鉄道、等高線、などは全て定義されています。また、これらを航海用電子海図として作成する場合の使用方法も規定されています。ただ、S-57 では、その方法を定義しているだけであって、紙海図に含まれる情報の全てを航海用電子海図に含む必要があるとは、どこにも記述がありません。


海外の航海用電子海図は?

・UKHO
 海図王国 UKHO の航海用電子海図は、同じ基準で地物の情報が含まれています。
・NOAA
 元となった紙海図の作成基準がバラバラなのですが、地物の情報は含まれています。
・韓国
 お隣の韓国では、地物の情報は、小縮尺には含まれておらず、大縮尺には、非常に丁寧に含まれています。
・インドネシア
 これも、地物の情報は含まれています。

 全てを調べた訳ではありませんが、全般的には、航海用電子海図の地物の情報は紙海図と同程度です。


地物情報不要論

 航海用電子海図は ECDIS で使用され、ECDIS は GPS により自船位置を必ず表示しているので、地物の情報に頼る必要はない、と言う考え方があります。確かに、自分の位置が GPS で正確にわかっているのだkら、陸上のどこかを基準にして、自分の位置を割り出す必要性はありません。変針点は、航海計画を立てた時点で、ECDIS の中で経緯度で現わされているのだから、陸上の目標は不要でしょう。現実に、地物の情報が描かれていなくても、ECDIS と航海用電子海図が航海目的で利用されています。
 この考え方を乱暴に拡張すると、航海用電子海図には、目標となるものは全て不要になります。航海計画を立てるときに、安全に航行できる場所さえわかれば、灯台も書いてある必要はないし、浮標もいりません。さて、これで良いのでしょうか?ナビゲーションを行う上では、目標となる地物は、それなりに必要だと思います。一方、航海用電子海図は全ての国で税のサービスとして提供されているのだから、不要な地物を編集して航海用電子海図とするための費用は削減されるべきでしょう。


紙海図に地物の情報は必要か?

 大昔の紙海図を見ると、例えば、山の表現は、二次元でありながら、三次元の形状を容易にイメージできる様に工夫されていました。逆に言えば、自船位置の把握のために、陸上の情報は重要であった、と捉える事が出来ます。航法の発達により、これらは徐々に簡素化されて、同じ山なら、等高線と山頂の三角点などが紙海図上に表現されるだけになっています。
 航海用電子海図で地物の情報が殆ど不要なら、同様に紙海図でも地物の情報は同様に不要なのではないでしょうか?紙海図を使って航海したとして、幾らなんでも今時の船なら GPS で自船位置がわかるでしょう。航海用電子海図を ECDIS で使用する事と同じ行為を紙海図で行うはずです。となると、紙海図にも航海用電子海図と同様、地物の情報は必要でなくなる、となってしまいます。


航海というアプリケーション

 元々、海図は航海目的で作られています。ところが、航法が時代と共に進化し、海図として必要な情報が変わってきたはずです。この様なテーマで海図を研究する価値はあるでしょう。



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